無臭・消臭

ワキガで悩んでいるとして、その臭いはどれぐらいのものなのでしょうか?

臭いは目で見ることができない

もし、臭いを計測する臭気測定器も開発されていますが、家庭や学校、オフィスなどで設置されている温度計のように一般的
ではありません。

そのため、臭気測定器をチェックして「今日は臭いがキツイから、学校をお休みにする」「事務所内の臭いが許容量を超えたから、換気をするように」というようなことは、現実的には起きてはいません。

このように、通常は臭いを「見る」ことができないため、さまざまな憶測によって心理的に大きな影響を及ぼします。

ワキガを持っている人も、その日の体調によっても強弱が現れますし、相手が臭いに対して敏感であれば、かすかな臭いでも「我慢ができない」というでしょうし、あるいは臭いに鈍感であれば、かなり強い臭いでも「まったく平気」ということになってしまいます。

このように臭いとは主観的なものであり、その診断は難しいものとなっています。

ただ、これまで診てきた患者さんで、診察室に入ってこられた途端に強い臭気を覚えたケースもあります。このような患者さんは重度の肢臭症で、カウンセリングの後に手術をしてワキガを解消することができます。

しかし、ワキガを持っていないのに、あるいは体臭がそれはどきつくないのに、過剰に意識してしまい、人前に出ることを恐れる人たちが増えてきました。

それがイジメの問題です。「自己臭症」に至る前に、学校や職場で「アイツは汚い、臭い」と仲間外れにされて自殺を選択してしまう悲しい事件が後を絶ちません。イジメは、本人ではどうしようもできない身体的特質や欠点を標的にして、しつこく繰り返されます。

こうした不幸な事件を未然に防ぐためにも、私たちはワキガや体臭について真剣に考えなければならないと思います。

また、多汗症は大量に汗をかくことによる不快感のはか、汗まみれになることによって他人の視線にさらされることが大きな苦痛となります。「それはど暑くないのに、自分だけが夕立に遭ったように大汗をかいてしまった」「いつも掌が汗ばんでいて、手をつなぐことができない」「いつも績の下に汗惨みが広がっているから、上着を脱ぐことが出来ない」など、多汗症も大きな悩みとなっています。

なぜワキガや多汗症になってしまうのか、どうすればそれを防ぐことができるのか、臭いを軽減することは可能なのかなど、ワキガや多汗症の原因である発汗のメカニズムと臭いの発生源について考えてみることにしましょう。


過剰に意識すると「自己臭症」になってしまう

ワキガは身体的特徴であると同時に、肢臭症という疾病でもあります。

そのため、誰でも面と向かってそのことを指摘しづらく、影で「アイツ、臭いよな」と噂することになってしまいがちです。

職場や学校などで本人に対して、そのことを指摘すると、セクハラやパワーハラスメントとして訴えられるおそれもあって、よりそのことを本人に知らせることが難しくなっているのではないでしょうか。

ワキガを持っている人も、長年、ワキガと付き合っていると臭覚が麻庫して、自身の臭いに鈍感になってしまっているケースも少なくありません。

また、どれだけ親しい間柄であっても、「1 う? 私、ワキガじゃないかいしら」と聞かれて、「そう思うよ。とても臭うから」とはいいにくいものです。多くの場合、「気になるんなら、制汗剤を試してみたら」と、お茶をにごしてしまい、本人は気づかないまま、周囲は迷惑に思ったまま、時間だけが経過してしまうことになります。

逆に注意したいのが、臭わないのに、「私って、臭いんじゃないだろうか」と思ってしまうケースです。

これが高じると「自己臭症」となり、必要以上に制汗剤や消臭剤を多用するようになってしまいます。自己臭症は「体臭恐怖症」とも呼ばれ、対人恐怖症の一種として神経症に分類されます。

気にするはどの臭いではないのに「私は臭い」と思い込み、人と会うことを拒んで引き寵ってしまう。そして引き寵ることによって、精神的に追い詰められてしまうという症例が数多く報告されるようになってきました。

そして、治療を受けにきた患者さんが「私のからだをまったく臭わないようにしてください」と、おっしゃることも少なくありません。

人間はいうまでもなく"生き物"ですから、生きていれば少なからず臭いを発生させています。それが許容範囲のものなのか、あるいは手術が必要なものなのかは状態によって異なります。

それを人形やロボットのように無機質で無臭なものにしてくれというのは無理な話です。これも昨今の「無臭・消臭ブーム」の過剰反応によるもので、ワキガ治療の大きな障害となっているのです。


臭いに対する寛容の心がなくなってきている

これまで述べてきたように、ワキガや体臭に対しておおらかな欧米と異なり、日本ではワキガを持っていることは大きなハンデとなってしまいまず。

離れ小島に一人で暮らしているのならともかく、職場や学校で不特定多数の人と接していれば、臭いに対して無関心でいることはできません。そのはか、通勤・通学でのパスや電車内でも臭いは周囲に流れます。

人間には背が高い・低い、太っている・痩せている、毛髪が濃い・薄い、眼鏡をしている・していないなどの身体的な特徴があります。そうしたことで、本人にどれだけ大きなコンプレックスがあったとしても、周囲の人間は無頓着で、風景の一部として見過ごしてくれます。

ところが、からだから異様な臭気を放っていれば、事態は一変するのではないでしょうか。

狭いエレペーターの中やラッシュ時の電車しハスの車中で、どこかからオナラの臭いが漂ってくる、あるいはニンニクの臭いや強い香水の臭いなどで、不快な思いをしたことのある人は少なくないと思います。

それはどまでに臭いが与える不快感は強烈で、体形や頭髪の有無、視力低下などと同しく、ひとつの身体的な特徴であるのに関わらず、周囲に"迷惑々と思われてしまうのです。

かつて、日本でも都市部の路地裏ではドブの腐敗臭が漂い、郊外の農村部では堆肥の醗酵臭が漂っているのは当たり前のことでした。

しかし、都市部では路地裏までがクリーンになり、農村部でも化学肥料が堆肥に代わって使用されるようになると、「しょうがない」とあきらめていた異臭や悪臭が漂わなくなりました。

人々は身ぎれいになり、消臭を心がけ、唾やタンを路上に吐くこともなく、タパリの吸い般も投げ捨てられることがなくなったことは喜ぶべきことでずが、あまりにも潔癖過ぎる社会に変わってしまったような気がしまず。

つまり、他者に対ずる寛容の気持ちがなくなり、臭いを発するのは「悪」であるという意識が、強まってきているように思えるのでず。


日本では「臭いを発生させない」ことがエチケットであり、マナー!?

 一方、日本人はどうでしょう。

日本人のワキガ発生率は10%から15%で、かなりの少数派ということになりまず。日本の風土は高温多湿のために汗をかきやずく、入浴習慣が定着していまず。

そのため、毎日お風呂に入ることが一般的で、「一日おき」や「三日ごと」などというと、冷ややかな視線が送られたり、若者言葉でいう「ドン引き」のリアクションが返ってくることでしょう。

ところが欧米では毎日の入浴習慣は極めてまれで、海外でホームステイした日本人の留学生か「あなたはどうして毎日シャワーを浴びるの。不経済だから出ていってくれ」といわれて、ホームステイ先から追い出されたという話も伝わっていまず。

このように日本では当たり前のことでも、海外では「非常識」とされることは少なくありません。欧米では気温が高くても湿度が低いため、汗をかきにくい、あるいは汗をかいてもすぐ乾いてしまい、ジメジメとした不快感が続かないという理由もあるようでず。

それはともかく、日本では「臭いを発生させない」ことがエチケットであり、マナーになっているのではないでしょうか。

ただ、そんな日本でも「香りの文化」は存在します。それが香道なのでずが、香道では香木を然してその香りを聞いて(嗅ぐとはいいません)鑑賞しまず。

そのはか、和服に香を焚き染めて「粋」を演出ずるなど、繊細で微妙な「香りの文化」はありまずが、最近ではとにかく「香り」や「匂い」「臭い」は敬遠されつつあり、「無臭」や「消臭」に拍車がかかっているように思われまず。


ワキガは欧米人にとって性フェロモンの一種

まず、ワキガについての認識について考えてみましょう。欧米ではワキガは珍しいことではなく、およそ80%もの人がワキガを持っているといわれていまず。

それは数千年にわたる肉食中心の食生活が原因とされていまずが、そのことを気にしているようには見えません。それどころか、体臭さえも個人の魅力として少なからずアピールしている風景を欧米ではよく見かけまず。

これはどういうことでしょうか。

生理活性物質であるフェロモンはギリシヤ語のPherein(運ぶ)」と「hormao(刺激ずる)」を合体させた「pheromone(刺激を運ぶもの)」という造語で、性的に発情(興奮)を誘発させる性フェロモンが広く知られていまず。

ワキガは、腋高部(肢のくぼみ部分)のアポクリン腺から分泌される汗が原因とされていまずが、ワキガが発生ずるのは第二次性徴が認められる思春期以降であるため、欧米人にとってはワキガも性フェロモンの一種ととらえている風潮があるようです。

つまり、性的に熟成していることを異性に知らしめるセックスアピールのアイテムと認識しているということでしょうか。

そのため、欧米では香水やオーデコロンは「体臭を消すもの」ではなく、体臭とブレンドさせて、いかに魅力的な匂いを発生させるかに関心を寄せているように感じられまず。

たとえばムスクの香りはジヤコウ鹿の生殖腺から分泌されたもので、性フェロモンの効果を期待したものといえるのです。


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