発汗
汗をかかないために水分補給をストップするのは危険なこと
多汗症が気になる、あるいは異常な発汗を抑えたいということで、水分補給を制限してしまう人がいらっしゃいますが、これはとても危険なことです。「体内の水分が多過ぎるから、汗になってしまうのだろう」と安易に考えて水分補給を怠ると、脱水症状を引き起こしたり、夏季には熱中症になったりもしますから、これまでと変わらず小まめな水分補給を心がけてください。
体内に余分な水分があると、それは汗ではなく尿として体外に排出されてしまいます。汗は、自律神経が必要だと判断して分泌されるものですから、これを自らの意志でコントロールできません。
そのため、体内の水分が不足すると汗が出にくくなり、出た汗も粘度の高いものになってしまいます。
また、ワキガと多汗症を項をわけて解説しましたが、ワキガ単独、あるいは多汗症単独というケースのはか、その両方を併発しているケースが多く見られます。「ワキガ治療のためにクリニックを訪ねたところ、多汗症の治療も行った」あるいは「多汗症を治すためにカウンセリングを受けてみたら、ワキガも見つかった」など、そうした症例は数えきれないほどあります。
ある女性の患者さんは、「着ているものに黄ばみや汗染みが広がって、いくらグリーニングに出してもきれいにならない」とクリニックでカウンセリングを受けたところ、かなり重いワキガであったことが判明したということもあります。
ご本人はご自身の臭いが気にならず、多汗症であると自己診断してしまったために起きたケースですが、こうした症例は数えきれないはどあります。
多汗症で、いわゆる「汗臭い」だけの男性が、ワキガと思い込んで長年悩んでいたというケースや「私は、ワキガなんかではありません」とクリニックで怒りだした女性の患者さんもいます。
その方はご主人に付き添われてクリニックにいらしたのですが、ご本人は自覚がない場合も往々にしてあるものなのです。
また、ワキガの臭いにしても「ネギのような臭い」「鉛筆のような臭い」にたとえられるように、一定のものではありません。
それこそ人それぞれであり、多種多様なものです。そしてその臭いの強弱も、どんな体調のときに強く、あるいは弱くなるのか、女性の場合、生理のサイクルと連動しているのかによっても異なってきます。
だからこそ、専門とするクリニックを受診して診断を仰がねばなりません。
その上で、日々のケアで臭いや汗を抑えることができるのか、生活習慣を変えれば改善できるのか、それとも手術が必要なのかについて真剣に考える必要があるのです。
異常な発汗は専門医に相談する
これらの多汗症とは別に、別の疾病が原因となって発汗してしまう多汗症状もあります。
まず、女性の更年期障害ですが、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲストロンには汗腺を調整する機能があります。それが更年期を迎えてホルモンの分泌が低下すると、その調整機能が低下して異常な発汗が認められるようになります。
さらに、更年期を迎えると精神的にも不安定になり、これまでに述べてきた精神性発汗も起こりやすくなってしまうのです。
そのほか、糖尿病では低血糖状態になると、大量に発汗してしまいます。こうした場合には迅速に糖分補給をしないと、糖尿病性昏倒を引き起こしてしまうため注意が必要です。
バセドー氏病や心臓疾患、高血圧などでも異常発汗があるはか、高齢者の自律神経失調症でも少なからぬ発汗を見ることがありますので、異常な発汗については素人判断をせずに、専門医の診察を受けるようにしてください。
精神性の影響が大きい「味覚性多汗症」
味覚刺激によって大量に汗をかくのが「味覚性多汗症」です。
唐辛子が入った食品やカレーライスなど、香辛料に反応して汗をかくのは正常な生理現象ですが、味覚性多汗症の人は味覚神経への刺激が過度に働き、食事のたびに大量の汗をかいてしまいます。
額や顔だけでなく、肢の下や背中など、特定の部位からの発汗のはか、全身で大量の発汗が認められることもあります。
味覚性多汗症についてはまだ解明されていない部分が多いのですが、味覚性発汗に精神性発汗が相乗して発汗を促しているのではと考えられています。そのため、症状の現れ方はさまざまで、唐辛子やニンニク、酸っぱいものなど、特定の食品や食材に反応するケースのほか、なにを食べても発汗してしまうケースもあります。
この味覚性多汗症の人と会話をしていて、実際に食べてはいないのですが、食事の話題になると鼻の頭に汗の粒が浮かんだり、額が汗で光ったりすることがあります。このように、食事を連想するだけで汗をかいてしまうというのは、発汗のメカニズムに精神性の影響が強いという証明ともなるのです。
そのため、味覚性多汗症に関しては、なぜ食事を摂ると汗が出るのかというメンタルな部分での治療が必要となるケースも少なくありません。
過去に、食事の際に大汗をかいて恥ずかしい思いをした、特定の食品や食材で飛び~がるほど辛い思いをしたなど、心因的なものが大きく関係しているようです。事実、自宅で同じものを食べてもそれはど汗をかかないのに、外で皆と会食すると倍はども汗をかいてしまうなどの相談を寄せられることがあります。
逆に、素麺や盛りそばなど、涼しげな食事でも汗をかいてしまうなど、「食事を摂る=汗をかく」と、刷り込まれていると、どのような状況でも大量の発汗は避けられません。
そのため、味覚性多汗症の治療は単に発汗を抑えるという外科的治療のほか、心療内科などと連携してメンタルな面での治療が求められるのです。
足蹠多汗症とは
「足蹠多汗症」は掌ではなく、足の裏に大量の汗をかく局所性多汗症です。足の裏、つまり靴の中は通常、他人の目にさらされない部分ですが、症状の重い人になると靴の中に汗が溜まってしまい、それが靴の表面や靴底から染み出したりもします。そして、それが乾燥して靴表面に白い粉を吹くようになったりもします。
靴下はいつも濡れていて、「スリッパを履くとスリッパが汗だらけになってしまう」「スリッパを使わずに廊下などを歩くと足あとがくっきり残ってしまう」などとなり、ある会社員の方から「目をかけてくれていた上司が自宅に招待してくれたんですが、恥ずかしくて家に上がることができなかった」という話を聞いたことがあります。
その方は重度の足賠多汗症で、夏場は夕方になると靴のなかで「ちゃぷん、ちゃぷん」と音がするはど汗をかいてしまうとおっしゃっていました。
足欧多汗症は見た目の悪さや汗による汚れのはか、臭いも気になります。靴のなかはいつも蒸れた状態であるため雑菌が繁殖しやすく、それが汗や皮脂を分解して悪臭のもとになってしまうのです。
これも手掌多汗症と同様に、実績あるクリニックでカウンセリングを受けることをお勤めします。
手掌多汗症とは
多汗症でもっとも多いのが「局所性多汗症」で、からだの一部分に異常に汗をかいてしまいます。こうしたものは暑さに反応してのものではなく、大部分が精神的な緊張やストレスによるもの、あるいはなにかの外的要因によって引き起こされます。まず「手掌多汗症」ですが、これは文字どおり、掌にびっしょりと汗をかいてしまう状態をいいます。
人間は誰でも緊張すれば掌が汗ばんできます。これが「手に汗握るという」ということで、自然な生理現象と呼べるものです。
ところが手掌多汗症は緊張していないリラックスした状態でも掌が汗ばんでおり、それに緊張が加われば滴り落ちるほどの汗をかいてしまいます。その結果、「手に持っていたハンカチが、絞れるはど汗を吸ってしまった」「ものをさわると、くっきりと指や手のあとがついてしまう
などの困っだことが起きてしまうのです。
日本では握手の習慣は定着していませんが、掌が汗ばんでいれば本人だけでなく、周囲も自然と気づいてしまうものです。
そのため、「あの人からファイルを借りたんだけど、くっきりと指紋のあとが残っていた」「机の上に汗が溜まった汚れがあった」「いつもハンカチを握っているなんて、よっぽど掌の汗がすごいんだろうな」などと噂になったりもします。
また、「恋人ができたら、手をつないで歩いてみたい」と思っていても、手掌多汗症のため、嫌われるのが怖くて手を差し出すことができなかったという話もよく耳にします。
この手掌多汗症については症状に大きな違いがあり、軽く湿っている程度なのに、酷く気にされているケースも少なくありません。そのため、いきなり治療や手術を考える前に、信頼できるクリニックでカウンセリングを受けることをお勧めします。
「全身性多汗症」は遺伝によるものもある
さて、多汗症とひとくちに言ってもさまざまな種類があります。まずは順を追って解説してみることにしましょう。
最初に「全身性多汗症」ですが、これは文字どおり胸や背中、お腹、お尻、脚の大腿部など、全身から大量の汗をかいてしまう疾患です。
なぜ、こうした大量発汗が起きるかというと、脳の視床下部にある体温調節中枢の異常のほか、急性リウマチやバセドー氏病、結核、婦人病、更年期障害、などの病気によってホルモンバランスに変調をきたして発症するケースも見られます。
また、先天的な精神性発汗になりやすい体質や性格の遺伝のほか、これらとの合併症として現れることもあります。
そのため全身性多汗症は、それぞれの専門医に相談して、その原因となっている疾病を治療することから始めなければなりません。
多汗症はワキガ以上にやっかいなもの
これまでワキガにっいて話を進めてきましたが、多汗症もまた心を重くしてしまう深刻な「現象」です。
ここで現象と言ったのは、異常な発汗は多汗症そのものを発症している場合と、はかの疾患によって副次的に引き起こされている場合があるためです。
また多汗症は「汗っかき」と混同されがちですが、汗っかきは暑さに敏感に反応して大量に汗をかいてしまう、あるいは運動の後にからだを冷やすためにたくさんの汗が出るというように、その理由がはっきりしているのに対し、多汗症は自律神経の失調や心因性のもの、あるいはほかの病気が引き起こす諸症状のひとつとなっているケースがあるのです。
ワキガは臭いという不快感を周囲に広めてしまという疾患・体質であるのに対し、多汗症はその本人が大量の汗によって不快感を強めることに大きな違いがあります。
しかし、多汗症も「いっぱい汗をかいてしまうから人前に出るのが恥ずかしい」となり、結局のところ対人恐怖に陥ってしまいます。周囲からも「見ているだけで暑苦しい」「汗ビッショリの姿を見ると気持ち悪くなる」などと、敬遠されることになってしまいます。
スソワキガとは
さて、ワキガとは別に「スソワキガ」というものが存在します。
アポクリン汗腺は績の下だけでなく、耳の中、おへその周り、乳首、陰部にも広く分布しています。そのためワキガ体質の方は、腺の下以外でもアポクリン汗腺が活発に活動しているため、ワキガ以外の場所での臭いも警戒しなくてはなりません。
スソワキガとは陰部がワキガのように臭うという体質で、場所が場所だけに、他人が指摘しづらく、本人もなかなか治療に踏みきれません。
実際はスソワキガであるのに、オリモノ臭や生理臭と混同してしまい、誤っだ処置法をしていたというケースをよく耳にします。
臭いというものは、その環境にしばらくいると慣れてしまって、臭覚が麻疹してしまうものです。
スソワキガだけでなく、ワキガやあらゆる体臭、ものに染みついた臭いも同様で、本人はまったく気づかず、周囲の人がその臭いに戸惑って顔をしかめることが往々にしてあります。
たとえば旅行から帰ってきて自宅のドアを開けると、カビ臭がしたり、タパコやペットの臭いを強く感じたりすることかありませんか。これもその環境に長くいると臭覚が麻庫してしまっていることによります。旅行でしばらく家を留守にし、嗅覚がリフレッシュした後で自宅に帰れば、もともとそこで発生していた臭いに気づいてしまうのです。
スソワキガのやっかいなところは、本人に強い自覚症状が感じられないということでしょうか。それは常に自分の臭いを嗅いでいるためで、強い臭いがあっても臭覚が麻蝉してしまっている可能性があります。
異性と交際して最初はうまくいっていたのに、性的関係を持つようになったら急に恋人が離れて行ったIというようなケースは、スソワキガに原因があるかも知れません。
スソワキガの治療は陰部そのものではなく、陰部周辺の陰毛の生えている部分を
治療します。そのことを理解して、スソワキガではないかと疑われる人は、専門の
クリニックでカウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。
ストレスや緊張が発汗を促す
生活面でいえば、食事のはかにストレスも見逃すことができません。
私たちの生活にストレスはつきものですが、ストレスが蓄積されていくとホルモンバランスが崩れたり、自律神経に失調をきたすことがよく知られています。
アポクリン汗腺は性的興奮のほか、極度の緊張などでも刺激され、におい汗を分泌してしまいます。また、「脂汗をかいた」「冷や汗ものだった」という言葉あるようにストレスや緊張は発汗と密接な関係にあります。「手に汗を握る」や「乗っていた飛行機が乱気流に巻き込まれて大きく揺れたので汗ビッショリになった」という汗はふつう汗ですが、このように緊張やストレスと密接な関係にあります。
性的興奮やストレス、緊張によつて分泌されたにおい汗が常在菌によつて分解され、それが皮脂と混じつてふつう汗によつて広がつてしまうワキガ発生のメカニズムを考えると、こうした心理的プレッシャーもワキガ発生の大きな原因となつているのです。
食の西洋化かワキガ増大の原因になっている
ワキガは残念なことに遺伝的要素が強く出ます。
調査によると、両親ともワキガの場合は約80%、片親がワキガの場合は約50%の確率で遺伝するといわれています。しかし、両親ともワキガでなくとも子どもがワキガになるケースもあるはか、逆に両親がかなり強いワキガでも、その子どもはまったく臭わないというケースも少なからず見かけられるのです。
ワキガは基本的に病気ではなく体質であるため、親からの遺伝的なファクターが影響するのですが、それ以外に食生活の偏りも大きな要因となっています。
前段で欧米人の約80%がワキガを持っていると述べましたが、それは肉食中心という食生活が大きく関係しているのです。
肉類には動物性脂肪や、脂肪酸、中性脂肪が豊富に含まれてるため、そうしたものを摂取すると汗腺類が活発に働くことになり、発汗を促すことになってしまうのです。
また、チーズやパター、生クリームなどの乳製品も汗腺を活性化させることが知られており、結果的に汗を臭くさせてしまいます。
ガンや糖尿病、高血圧など、いわゆる生活習慣病と同じように、ワキガも生活習慣が大きく影響を与えています。
世の中には「うちはガンの家系だから」と、遺伝的なものによって病気が決定されるような言い方をする人がいますが、遺伝的な要因に加えてこうした生活習慣が重大な影を落としていることが少なくありません。
つまり家族が同じ食事を摂ることにとって、同じ体質になってしまうのです。
かつて日本の食卓は魚や野菜が中心で、肉類はほとんど食べられていませんでした。ところが食の西洋化か進み、肉類や乳製品を多く摂取するようになってくると、欧米人のようにワキガ体質になるのは当たり前で、それは今後も増加する一方でしょう。
そのはか、エスニック料理や刺激性の高い食品も人気になっています。香辛料をたっぷり使った料理は汗腺を刺激するだけでなく、皮脂にそうした成分が蓄積されて、汗に強い臭いをつけてしまうことになるのです。
また、揚げ物や多量に油を使った料理も注意が必要で、ファーストフード店などでは劣化を防ぐために、脂肪酸を多く含む油が使われがちです。これも汗腺を刺激しますので、より汗が出やすくなってしまうのです。
なお、ワキガの原因であるにおい汗は第二次性徴が認められる思春期以降に分泌されるようになりますが、耳の中にあるアポクリン汗腺は幼児のころから発達しているため、小さな子どもでも耳垢が湿っていれば将来、ワキガになる可能性があるということになります。