ワキガ

外科手術に優る対処法はない

ここまで、制汗剤からエステによる処理法までを駆け足で解説してきましたが、こうした対処法は一時しのぎや気休め程度にしか過ぎないことがご理解いただけたと思います。

読者の皆さんにしてみれば「美容外科の先生加古いている本だから、絶対、美容外科が最高ですと言うに決まっている」と思っておられますか?

しかし、我田引水ではないのですが、やはり外科手術に優る対処法は今のところないのが実情なのです。

先にふれたエステの手法も、アプローチとしては間違っていません。アポクリン汗腺の分泌口を破壊してしまえば、一時的にしろにおい汗は皮膚の上に湧出しなくなります。

ところが、半永久的にこれが達成されるかというと、悲しいことに数力月でもとどおりになってしまうのです。

そのため、ワキガを根元から断つためには、アポクリン汗腺そのものを除去するしか方法はないのです。それが手術ということになるのですが、一般の方は手術と聞くと、「痛いんじゃないだろうか」「手術痕が残ると嫌だ」「手術しても再発したら意味がないじゃないの」と懸念を示されます。

こうした疑問や不安については次章で詳しく解説することにしますが、最後の「手術しても再発したら意味がないじゃないの」という不安については、「一部に、そうした可能性はある」とだけ中し上げておきます。

というのは、人間のからだは素晴らしい再生能力を有しているからです。とくに小さなお子さんや思春期のころは、大きな傷を負ってもすぐに傷が塞がって組織や細胞が再生してしまいます。

そのため、こうした年齢でアポクリン汗腺を完全に除去しても、しばらく時間が経てば再生してしまうという懸念もあるのです。そうしたことを含めて私たち美容外科に携わる医師たちは、どのような症状で、どのように対処するのが一番なのかと、そればかりを考えています。

診療科目に美容外科を掲げていることから「外科の先生は切ってなんぼの商売だから」と揶揄されることがありますが、正直申し上げて、執刀するには医師も大きなリスクを背負っているのです。

もし、望まれる効果が得られなかったら、もし医療過誤として訴えられたらと考えると安易にメスは握れません。

しかし、そうしたリスクを負ってでも、最良の選択ができるよう私たちは日々研鑽しているつもりなのです。

前置きが長くなりました。

そこで次章からは、ワキガ治療の歴史と現在における最新の治療法について話を進めていくことにしましょう。


根本的な治療にはならないエステの施術

「電気凝固法」は毛根ではなく、毛根から数ミリ離れた場所に針を刺し、高周波電流を流すことで毛根を凝固させてしまう方法です。凝固した毛根は簡単に抜くことができるため、永久脱毛効果があるとされています。

ワキガに関してはアポクリン汗腺や皮脂腺までも凝固させることで、これを破壊し、ワキガのもとを断つことができると謳っていますが、実際のところ完全な破壊は難しく、一度破壊されたとしてもやはり数力月で、アポクリン汗腺や皮脂腺は再生されてしまいます。

そのほかエステでは、「インフォレーゼ」と呼ばれるワキガ処理法が導入されています。

これは、ホルマリン溶液に浸したガーゼに電極を巻き付け、それを肢の下に押し当ててから電流を流すという方法です。ホルマリンの薬剤効果と電流という二重の刺激によってアポクリン汗腺の分泌口を破壊するという手法ですが、これまで述べてきたように、分泌口を破壊するだけでは根本的な治療にはなりません。

イッフォレーゼも電気分解法や電気凝固法と同じく、短い期間でアポクリン汗腺の分泌口は再生されてしまいます。いえ、それらより効果は短く、実際のところ1週間から2週間で、もとどおりになってしまうことになってしまうのです。


麻酔を使用しない限り、無痛はあり得ない

エステの脱毛処理の代表的なものに「電気分解法」があります。毛穴に針を刺して、そこに電流を流すことで毛根を破壊する方法なのですが、エステ側では「毛根に向かって開口しているアポクリン汗腺の分泌口も破壊できますから、ワキガに効果があるんですよ」とトークしているようです。

しかし、一時的にアポクリン汗腺の分泌口を破壊することができたとしても、近い将来には必ず再生してしまいます。つまり、におい汗の出口を塞いでしまっても、アポクリン汗腺そのものを除去しないと、もとどおりになってしまうのです。

また、エステでの脱毛処理とワキガ対策は毛根をターゲットとしているために、毛穴の周囲にあるエクリン汗腺に対してはノータッチです。そのため、多汗症には対応できず、ワキガと併発されている方は不満だけが残ることになってしまいます。

さらに、エステは理学療法のため麻酔が使えません。麻酔を使えるのは医療機関だけなのです。

そのため、多少の個人差はありますが片側で約800本もある絨毛を一本ずつ処理していくことになります。その結果、すべての肢毛処理に短い方で数力月、長くなると2年もの時間を要してしまうことになるのです。

また、電気分解法はデリケートな肢の下に針を刺すという方法です。肢の下はからだのなかでもとくに敏感な部位で、痛みに対しても鋭く反応します。エステのなかには無痛を謳っていうところもありますが、医師として言わせてもらえば麻酔を使用しない限り、無痛はあり得ません。生身のからだに針を刺すのですから。

その結果、ついには痛みに耐えかねてクリニックに相談にいらっしゃる方が少なくないのです。

最後に付け加えるなら、電気分解法は永久脱毛についても回数が多く、エステシャンの技術不足に伴う、毛の再生例が数えきれないほどあります。エステで脱毛やワキガ処理を受ける前に、その成功率を事前に確かめるようにしたいものです。


腋毛を処理すれば臭いは軽減できる

ワキガの臭いは、脱毛にからまることで一層強くなります。

それは腋毛に付着することで臭いのもとが落ちにくくなり、さらに蒸れることによって、常在菌の繁殖が促されてしまうからです。

そのため、腋毛を処理すればある程度、ワキガ臭は軽減されますし、日々のお手入れも簡単になります。女性は、ほとんどといっていいはど脱毛を剃っておられますが、これはワキガ対策というよりもエチケットというべきものでしょう。

ところが男性は「腋毛を剃るなんてカッコ悪い」とばかりに、そのままにしていることのはうが多いのではないでしょうか。

いくら、腋毛のあることがワキガのために悪いと知りつつも、なかなか男性は腋毛を剃ることに踏み切れません。最近では、男性エステでも脱毛の永久脱毛というコースも用意されているようですが、まだまだ少数派です。

一方、女性は日常的なものとして肢毛処理を行っていますし、エステでの脱毛の永久脱毛も人気です。

エステで「脱毛だけにゃなく、ワキガ処理も一緒にしてみませんか」と誘導されたという話をよく耳にしますが、本当にエステでワキガ治療ができるのかは大きな疑問です。

というのも、エズテのワキガ治療は一時しのぎにしかならず、やがてワキガは再発してしまうからです。

そこで次項からは、エステの脱毛処理とワキガヘの応用ついて考えてみることにしましょう。


食事の制限では限界がある

そのほか、食事の内容を見直すというアプローチもあります。

先にふれたように、肉類や乳製品、香辛料を多く使っだ食品ばかり偏って食べていると、体質が一層欧米人に近くなり、ワキガ臭はきつくなってしまいます。

ビタミン類が豊富な緑黄色野菜や豆類、雑穀などのほか、ミネラル類をたっぷりと含んだ魚介類は日本の伝統食であり、毎日の入浴習慣と併せて日本人のワキガ臭を少なくさせてきました。

そうしたものを意識して摂取することは重要ですが、それにも限度があります。

糖尿病や高血圧症などの生活習慣病では厳しい食事制限が加えられよすが、そのことが大きなストレズとなってしまいがちです。

とくに小さなお子さんの場合、「あれもダメ、これもダメ」といわれたら精神的に追い詰められてしまうことでしょう。前述したようにワキガは第二次性徴が認められる思春期から始ります。その時期はいわゆる「育ち盛り」なだめ、からだはカロリー価の高い肉類や乳製品を求めるのは自然なことなのです。

食事を過度にコントロールしたために、それがストレスとなって発汗を促し、かえってワキガを悪化させた、あるいは多汗症になってしまったという症例もあるほどです。

こうしたアプローチは軽度のワキガには効果が期待できますが、重いワキガには根本的な治療が必要になることを理解してください。


「殺菌剤」は一時的な処置に過ぎない

つぎに「殺菌剤」ですが、市販の消毒用のエタノール水溶液やイスフロパノール水溶液を脇に塗って常在菌を殺菌する方法が一般的です。また、前述した市販の制汗剤にも殺菌成分が配合されており、その効果が期待できます。はかにも過酸化亜鉛や硫酸オキシキノリン、ヘキサシミンなどの薬剤を配合した殺菌剤も少なくありません。

ただ、こうした制汗剤や殺菌剤は、その効果が持続するのは半日から一日程度で、それを過ぎればもとの状態に戻ってしまいます。

制汗剤に関しては薬剤で毛細血管を収縮させ、汗腺の働きを低下させても、薬剤の効果が失われると、再び汗腺類は活発に活動を始めてしまいます。殺菌剤も同様で、一度手洗いしたらずっと手は清潔かというように、いつしか常在菌が入り込み、もとどおりになってしまうのです。

そのため、制汗剤や殺菌剤を常時用意し、毎日あるいは数時間ごとに使用することが理想なのですが、先にふれたようにかゆみやかぶれを発生させることもあり、現実的ではありません。

ただ、軽いワキガの場合や運動のあと、お出かけ前には効果的で、試してみる価値はあります。

しかし、重いワキガや多汗症の場合、こうしたものでは完全に防ぐことはできません。最近では制汗剤、殺菌剤ともかなりお求めやすくなってきましたが、これを継続して毎日使用するとなると、そのコストはかなりなものになるはずです。


かゆみやかぶれが心配な「制汗剤」

におい汗がワキガの"犯人"なら、それが出てこないようにするのが一番です。そうした目的で開発されたのが「制汗剤」で、皮膚の毛細血管を収縮させたり、汗腺に直接働きかけて、その活動を弱くさせることで発汗を抑制させます。

古くは明馨(みょうばん/硫酸カリウムアルミニウム12水和物)があり、服の制汗・防臭剤としてもっともポピュラーなものです。

最近では塩化アルミニウムが人気で、市販されている「テノール液」や「オドレミン」が塩化アルミニウムを配合した代表的な制汗剤としてよく知られています。ただ、塩化アルミニウムに関しては、かゆみやかぶれが少なからず報告されており、手掌多汗症や足脈多汗症に効果があるものの、服などのデリケートな部分では継続的に使用するのは考えものです。

事実、こうした服用の制汗剤は、塩化アルミニウムの配合をかなり抑えていますが、皮膚の弱い方はかゆみやかぶれを訴えがちです。

掌や足裏の制汗で使用する場合も20%以下に薄めるのが基本で、濃度が高いと肢同様にかゆみやかぶれを発生させてしまいます。また、塩化アルミニウムは継続的に使用していると効果が減衰したり、その部分での発汗は少なくなったものの、それ以外の場所でが噴き出すようになったという症例も報告されています。


原因を取り除けばワキガはなくなるはず

これまで、「ワキガの原因はにおい汗で、それが常在菌によって分解され、さらに皮脂が混ざり、ふつう汗によって広がる」と、ワキガの発生原因について述べてきました。

それに対して「におい汗を出さないようにすればいいんしゃないの?」「常在菌がいなくなれば、におい汗だって臭わないはず」「皮脂やふつう汗の分泌を抑えることができたら、臭いは広からないでしょう」などの素朴な疑問が湧いてこられたことと思います。

そこでココでは、数多くのデオドラント剤やエステの処理などについて考えてみることにしましょう。


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