治療
「術後臭」のケアまでキチンとできるか
そのほか、ワキガの手術を受けると、腋毛がなくなってしまったり、薄くなったりしてしまいます。
これはアポクリン汗腺が毛根に近接しているためで、アポクリン汗腺を除去することによって毛根もダメージを受けるからです。女性の場合は、ワキガ治療と腋毛の永久脱毛が同時に実現できるため、腋毛がなくなることは大歓迎なのでしょうが、男性にとっては複雑なところです。
人前で上半身裸になる状況は限られているでしょうが、男性にとって腋毛がなくなるということに抵抗感を覚える方が少なくないため、手術後に「こんなことになるなんて......」と慌てないように、事前にしっかりと医師から説明を受けるようにしてください。
そして、一部の患者さんに「術後臭」と呼ばれる症状を訴える方がいらっしゃいます。これはワキガはなくなったものの、スソワキガや全身のアポクリン汗腺から分泌される汗の臭いが気になってしまうという現象です。 はとんどの医師は「気のせいですよ」と片づけてしまいがちですが、それが本当に気のせいなのか、それともスソワキガをはじめとするアポクリン汗腺によるものなのか、あるいは自己臭症なのかを見極める必要があります。
医師は「手術をしたから、もう終わりです」ではなく、こうしたアフターケアも含めて患者さんに対処しなければなりません。
インターネットやテレビ、雑誌、書籍など、情報が溢れている現代だからこそ、あなたにとってどんな治療が必要なのかを見極めなければなりません。
そのため、治療に際しては医師任せにせず、わからないことがあったらどんどん質問するようにしてください。
どれだけアフターケアできるかが、大きなポイント
まず、人間は高い自己再生能力を有しています。
外傷を負ってもいつしか傷口が外がり、竹析してもその部分を固定して時間が経過すれば骨がつながります。
ワキガのもとになるアポクリン汗腺にしても同様で、人為的な方法で破壊しても高い再生能力によって再び組織がよみがえり、以前のような活動を再開させてしまうことがあるのです。
そのため汗腺の破壊ではなく、切除法や剪除法のように汗腺を根こそぎ取り去ってしまうことがベストなのですが、前述したようにこれらの方法ですと大きな傷痕が残ったり後遺症が心配です。
そうしたことを避けるために、最新のワキガ手術法が開発されたわけですが、人体の再生能力のことを考えると、どうしても再発ということを意識しなければなりません。
しかし、クリニックのなかには「再発の心配なし!」と宣伝しているところが少なからずあり、同業者として眉をひそめたくなります。
さらに、患者さんが未成年の場合、汗腺が十分に発達していない場合があります。つまり汗腺の赤ちゃんのようなもので、手術時に、活発に活動している汗腺を切除しても、赤ちゃんたった汗腺がその後、発達して再びワキガになってしまうというケースです。
こうしたことからも、どれだけアフターケアできるかが、クリニック選びの大きなポイントとなるのです。
半永久的な効果が期待できる「ハイブリッドマイクロシェーバー法」
確実性の高いワキガ治療として高く評価されているのが、「ハイブリッドマイクロシェーバー法」です。
ハイブリッドマイクロシェーバー法とは、従来のマイクロシェーバー法を改良して神経と血管を選択的に温存し、臭いの原因組織を目で一つひとつ確認しながら丁寧に取り除く、今までの治療法を格段に改良した、身体に優しいワキガ・多汗症・黄ばみの専門治療法です。
ハイブリッドマイクロシェーバー法は、腋の下に局所麻酔をしてから5ミリほどり開し、特殊な竹を挿入します。管内のカッターが汗腺を切除するのと同時に、吸引するという画期的な方法で、ワキガの原因となる汗腺を残さず除去することができます。
ハイブリッドマイクロシェーバー法によるワキガ治療の最大のメリットは、アポクリン汗腺を根こそぎ除去するという細密な手術でありながら、切間する長さが5ミリ程度ということにより傷痕が小さく、術後の回復が早いことです。
手術時間は片方で1時間ほどで、入院の必要はなく、日帰り治療が可能です。
さらに、術後の肩や腕を挙げる運動制限期間も2週間程度でよく、術後の通院も少ない回数で済みます。
しかも、手術の成功率が高く、半永久的な効果が期待できるはか、術後の合併症などもほとんどありません。
そのほか、0.6ミリという極めて細い「プラズマ」と呼ばれる器具を腋の下に挿入してアポクリン汗腺を破壊する方法もあり、軽度の腋臭症の際に使用することもあります。
「超音波法」では効果も少なく火傷のおそれも
ここ数年、ワキガ治療の「最先端治療」として人気を集めている「超音波法」ですが、数多くのメリットがあるものの、万全な治療法とはいえない事実があるようです。
まず、超音波療法は接の下に数ミリの穴を開けて、そこから超音波発生器を挿入させます。それから超音波を発生させて汗腺類を破壊し、壊れた汗腺類を吸引するというものです。
限定した周波数を使用することで汗腺類にのみダメージを与え、ほかの血管や神経、組織を傷つけることがないとアピールしていますが、実際には汗腺を破壊するほど超音波をあてると、発生した熱によって皮膚が火傷をしたり、組織内水腫の合併症が発生したとの報告も寄せられており、これも完璧なワキガ治療といえません。
さらに、アポクリン汗腺の取り残しも多いようで、手術後に高周波を用いた電気メスでアポクリン汗腺を焼いてしまうという事後処理も行われているそうです。
新たにレーザーを使用した手術方法も
そのほか、レーザーを使用したワキガ治療もあります。「レーザーサクション法」は績の下を3ミリほど切開し、特殊な治療器を挿入してレーザーを照射するもので、アポクリン汗腺とエクリン汗腺を破壊して吸引します。
はかには直径1ミリのレーザーファイバーを毛根部に挿入してレーザーを照射し、破壊された汗腺を吸引器具で吸い出す「マイクロレーザー法」があり、メスを使わない治療法として人気が高まってきました。
ただ、レーザーも完全ではなく、破壊されなかった、あるいは吸引しきれなかった汗腺がそのまま留まり、ワキガが再見してしまう可能性があります。
脂肪吸引技術から派生した「皮下組織吸引法」
現在、美容外科クリニックで採用されているのが、「皮下組織吸引法」です。これは、腋の下に数ミリの小さな穴を開けて、そこから「カニューレ」と呼ばれる細い竹を差し込んで汗腺煩をかき収にりながら吸引する方法で、腹部や太ももなどの脂肪吸引技術から派生した術式です。
皮膚を切開するのではなく、小さな穴を開ける方式のため、傷痕はほとんど残りません。からだへの負担も小さく、術後の回復も早いことから入院の必要がないということが最大のメリットといえるでしょう。
ただ、皮下組織吸引法も軟部組織(脂肪)は吸引できますが、汗腺のように皮下にしっかりとくっついている組織は十分に取りきれ、結果が不十分なことが多いです。ただし、一時的に汗腺にダメージを与えることにより発汗が低下するため改善したかのように思えますが、術後半年ぐらい経過して患者さんから「臭いがしています」とクレームが発生するケースが多くあります。
さらに進化した「皮下組織削除法」
つぎに登場したのが、「皮下組織削除法」で、特殊なローラーを装着したハサミ状の専用器具を使用して皮膚内部の組織を均一に掻き取ります。皮下組織削除法ではアポクリン汗腺だけでなく、エクリン汗腺や皮脂腺なども除去できるため、かなり進化したものと評価できます。
実際には肢の下に2~4センチほどの切り込みを入れ、そこから汗腺類を掻き取るのですが、肢全体を処理する場合もすべてこの1ヶ所の穴からアプローチします。
ところが、医師の技量が未熟だと皮膚に穴を開けてしまうほか、皮膚を薄く削り取るために手術痕が黒ずんでしまうこともありました。
治療施設によっては最低3日間の入院に加えて、術後1週間は績を固定しなければならないため、復帰に時間を要してしまいます。
高度なテクニックが求められる「剪除法」
つぎに「剪除法」ですが、これは肢の下に4~5センチの切れ目を入れて皮膚を裏返し、目視によって汗腺を確認しながら切除していく方法です。この方法は皮膚を裏返すことから「反転剪除法」とも呼ばれているものです。
剪除法は皮膚を裏返しておいて手術後もとに戻すため、切除法のように脇が引きつれるようなことかありません。
しかし、メスを入れることによって傷痕が残るほか、黒ずみが発生したりもします。腋のシワに沿ってメスを入れれば、ある程度、傷痕を目立たなくさせることは可能ですが、やはりメスを入れるということで少なくない出血があるほか、回復には時間を要します。
また、アポクリン汗腺は皮膚の奥のほうに、エクリン汗腺は皮膚の表面近くに存在していると先に述べました。
そのため剪除法ではアポクリン汗腺を切除するのは容易なのですが、エクリン汗腺を同時に切除するとなると、皮膚を薄く削ぎ落とすような高度なテクニックが要求されます。
これに失敗してしまうと、皮膚に穴を開けることになり、大きな傷痕を残してしまいます。
ワキガは多汗症と併発しているケースが多いにため、できることなら同時に治療したいと思っても熟練を要する剪除法ではこうしたリスクを伴ってしまうほか、時間がかかるために、費用も割高になってしまいがちです。
「切除法」には後遺症がつきもの
まず「切除法」ですが、これは脱毛の生えている部分に沿って、皮膚を削り取ってしまう方法です。
メリットとしてはアポクリン汗腺やエクリン汗腺を根こそぎ取ることになるため、ワキガや多汗症は完全に封じられ、再発することもありません。
しかし、その手術の範囲が広いことや相当量の出血が見られるため、復帰までは2週間以上の安静が必要でした。切除後は、周囲の皮膚を引き寄せるようにして縫合するため、どうしても接が引きつってしまい、腕が上がりにくくなったり、動作に不自然な要素が出てくるようになります。
さらに、血管や神経にも負担がかかり、むくみや運動障害などの後遺症が数多く報告されていました。傷痕も大きく、とてもノースリーブやタンクトップなどの肢が露出するような服は着れなくなってしまいます。
そのため切除法は過去の術式となってしまっており、現在ではまったくと言っていいほど見られることはありません。
ただ、これまでにこうした手術が行われたことにより、「ワキガの手術は怖いもの」という誤った認識が広まってしまったのは、とても残念なことです。
ワキガ・多汗症治療で成功と言えるには、多くのハードルがある
ある意味で、ワキガや多汗症の治療は非常に単純なものです。
つまり、ワキガの原因となるアポクリン汗腺や多汗症の原因となるエクリン汗腺を切除・摘出してしまえば、長年にわたって苦しんでこられた、これらの症状をきれいさっぱりと解消できるからです。
しかし、現実ではその処置に強い痛みを感じたり、再発してしまったり、強い副作用や後遺症が残ってしまったりもしています。
とくに再発に関しては大きな問題で、ワキガや多汗症のもとになる汗腺をすべて除去・摘出したはずなのに、実際にはそれが残ってしまい、再発してしまったという症例が数多く報告されています。